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2017年4月23日 (日)

AIが人の仕事を奪う、という妄言

この文では、コンピューターという言葉を、実際に仕事ができるコンピューター、すなわち微小なトランジスタの集合などでできたハードウェア、とそれを動かすプログラム、別名ソフトウェアが一体になったもの、という意味で使う。

そしてAIないし人工知能という言葉がこのところやけに独り歩きしているけど、そんなに特別扱いする必要はない。AIも、上記の意味でのコンピューターにすぎない。

で、コンピューターは機械である。機械が人間の仕事を奪うことは、相当昔からあり、だからAIという種類であろうがなかろうが、コンピューターが人の仕事を奪うのは当然である。

認識すべき重要なことは、機械が普及すると人間の新しい仕事が生まれることだ。単純で分かりやすい例としては、内燃機関を動力源とする移動機械(自動車)が普及したことによって駕籠かきや駅馬車便は職を失ったが、自動車の運転手という仕事が生まれた。また自動車によってローカルな物流が発達し、小売業がローカルに充実し、そこに膨大な数の第三次産業の仕事が生まれた。今アメリカでは、男子の最多職業はトラックのドライバー、女子は(さまざまな形の)売り子、という州が多い。田舎に物を売りに来る、曳き売りや担ぎ屋の人たちは、仕事を失った。

コンピューターの普及は、現状はまだ飽和状態にほど遠い。コンピューターは今後もっともっと、社会と生活のあらゆる部分に浸透していく。

そうなると、コンピューターの開発生産からエンドユーザーによる利用にいたるまでの、さまざまな場所で、ものすごく大量の仕事が生ずる。人間にしかできない仕事が。ここでも分かりやすい単純な例を一つだけ上げると、AI、人工知能と呼ばれるコンピューターは、開発が人間の仕事であるだけでなく、それがまともな仕事ができるようにするための“教育訓練”も、単純なもの以外は人間の仕事だ。とにかく、コンピューターの周辺には膨大な数の、人間の仕事が、どうしても必要なものとして生まれてくる。

AIは人間の仕事を奪う。そして同時に、人間の新しい仕事へのニーズをおびただしく作り出す。AIは、という言葉を消して、機械は、に置き換えれば、それは普遍的な歴史的事実だから、大騒ぎする理由はどこにもない。

トランプのように、地球温暖化説を捏造と称して、石炭産業を再興しようとする方向性は、自動車の普及期に飛脚産業や駕籠屋産業を再興しようとする動きに等しい。たとえばこの私は長距離移動をしなくなって長い。コンピューターがあればアフリカ奥地にいても仕事ができるからだ。石炭を燃やす必要性が、そのぶん減っていく。

ちなみに私個人を例にとれば、コンピューターは、ドキュメンテーションがとっても重要である。本当に役に立つドキュメンテーションは、人間にしか書けない。


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コメント

最近、将棋はAIの方が断然強いがそれにどれだけの数の人間が関わって時間を掛けている事か・・・。

投稿: 南 | 2017年4月24日 (月) 07時10分

機械にできなくて人間にしかできないことはある。
やっぱこうでねいと。  ふ、ふるい。

機械は、無感情であることをよーく頭に入れとかなくては。

投稿: n,s | 2017年4月25日 (火) 08時02分

微妙なニュアンスを必要とする翻訳などはどうなるのでしょう……機械翻訳ですべてことたりる日がいつか来るのでしょうか。
友人でイタリア語通訳をしている女性が「通訳は機械ですべて処理できるほど甘い業務ではない」と書いていましたが、まあ、そのとおりでしょうね。

投稿: かおる | 2017年4月25日 (火) 08時23分

 AI(コンピュータ)も人間なり。

投稿: 市川智 | 2017年4月25日 (火) 23時12分

囲碁などの対戦ゲームの人間対AI戦も、欺瞞的虚飾を剥げば人間対人間のタタカイですけど、片方は大量の時間とお金をかけて作ったコンピューターを使える、他方は使えない、という不公平があるだけです。AIが人間に勝った、などは、噴飯もののウソ。人間名人にも、強力なコンピュータープログラムを作る時間とお金を与えよ! それでやっと、フェアな試合になる。

投稿: iwatani | 2017年4月26日 (水) 07時48分

AIやコンピューターは、言葉の意味を理解してないというのも読んだ。ほんとかいなと思う。ペッパーくんがいくら 「いらっしゃいませ、ありがとうございました、もうしわけありません」 といっても、やつは意味が分かってないし、心が入ってるわけがない。そういうカラ念仏でしゃべられてもなんか薄ら寒いだけではなかろうか。また、そんな機械に「ああしたらどうでしょう、こうしたらどうでしょう」と命令されても素直に聞くことができるのだろうか。ディープラーニングがいくら発達しようが、心というものが入ることはないだろう。20年先人間がAIより優れていると言えるのは、「心と心で接する、思いやりで接する」という点に特化されるのではないでしょうかね。(新井紀子 東ロボ君 で検索しました)

すいませんが、"教育訓練”とはどんなことを指すのか教えてもらえたら幸いです。プログラミングでしょうか。

投稿: n,s | 2017年5月13日 (土) 07時33分

少々気が引けるが書かせてもらいます。

自分が今積極的に見たいと思えるTV番組は日曜の{ワイドナショー」だけである。その中の何を見たいかといえば、松本のコメントを聞きたいのである。松本人志といえば自分の中で、最後の最強のお笑い芸人である。「ガキ使」のフリートーク時代からのファンである。
今の放送の中でも、最後の最後に名コメントが飛び出した。泉谷しげるの阿蘇ロックフェスでのライブ映像を見て、松本は「この人のお葬式には出ようと思いましたね。」と漏らしていた。それを聞いてイズミヤの大笑いの映像で終了。
なんかそういう、お笑いとリスペクトと愛情をいっぺんに放り出す離れ業が好きなのである。個人的に確かに天才だと思う。そういう閃めきで出せる才能である。
いやーー、これはAIにはできない仕事である。AIの代行によって人の仕事がへっていくなら、人間は人間にしかできないことをやれば良い。機械は感情を持てない。愛情とはもっとも遠い存在ではなかろうか(永遠かどうかは知らないが)。人間はそのあいた時間で、どうかやさしみのある関係をつなぐ仕事をして欲しいと願うのである。また経済もkanakaさんみたいに、ありがとうでも回る仕組みができたらと願うのである。

投稿: n,s | 2017年6月 4日 (日) 12時48分

TSUTAYAにもセルフレジ・マシーンが入った。恐ろしい。
将来はAIが、より優秀なAIを作り続けるらしい。シンギュラリティ。
人間の性質を変えなければ、BIも上手くいきっこない。
いくら制度を変えたって、人間しだいだよ。

投稿: n,s | 2017年9月 6日 (水) 07時44分

どうなんでしょう、BIてのは9割の国民を必要最低限の生活レベルにとどめおいて、生かさず殺さずにしときゃいいや、っていう政策なんだろうか。やりたきゃ1割の超富裕層にコビを売って、日ゼニを恵んで貰えよてなもんだろうか。
トリクルダウン方式と同じで、全っ然信用ならないのでは。こと支配層に対しては甘く見積もれないよなー。俺らも自省を込めて対応しなくちゃ、前には進めないよなー。

ほやけど、ほんとに10年後あらかたの仕事がAIやドローンや技術ロボットに、とって代わられ仕事がなくなったら、どうやってカネをゲットするんやろう。働かなくても(最低限)食っていける世の中になるのか、はたまた、賃奴隷と貴族という見事に二分化された社会になるのか。おもろいでんな。    どう思いますか。

投稿: n,s | 2017年9月12日 (火) 20時31分

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