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2012年11月26日 (月)

貨幣の本質が「差異」であることに目醒めることの重要性

これも、これまで何百遍も言ってきたけど、今の新しい読者が、昔の私の文を見る機会はほとんどないだろう。

最近の番組欄でちらっと見ただけだが、「なぜ格差はなくならないのか」とかある。この場合、格差とは貧富の格差のことだ。

格差はなくならないし、貧困はなくならない。なぜなら、貨幣は稀少財でないと、すなわち、片方に相当大量の"それを持たないこと”が存在しないと、貨幣としての価値を持たないからだ。今のような制度貨幣が発明される前の、実物貨幣のころを想像すれば、それが稀少財であることがよく分かるだろう。

格差がない、という状態を想像してみよう。貨幣が、『空気』のように、あるいは“水と安全はタダである”と言われる某国での『水』のように、その保有にも可利用性にもまったく差がない、つまり“稀少財ではない”と、そんなものを何かと交換に欲しがる人はいない。このことから分かるように、貨幣は、稀少財==貴重財でないと、貨幣と見なされない。

すなわち、貨幣に格差はつきもの。格差がなければ貨幣ではない。(それもぬるい格差ではだめで、相当シビアな、厳しい、峻険な格差である必要がある。)

稀少財、貴重財は、それを持ってることや持ってる人が希少だから稀少財、貴重財と呼ばれる。そして、それを持ってると持ってないの階層は、上に少数の大富豪を、そして下に膨大な数の極貧層を作りだす。(最下層は貨幣ゼロ層だから、貨幣支配の社会ではチャリティによってしか生きられない…福祉を、公共化されたチャリティと呼ぶならば…。

言い換えると、膨大な数の極貧層は、貨幣の貨幣性を支えている、偉大なる存在である(これはもちろん、苦(にが)いジョーク)。彼らがいるからこそ、貨幣のありがたさが存続するのだ。ありがたい→有り難い→有ることや有することがきわめて困難→持ってない人が多い→稀少財貴重財。

貨幣経済という苛酷の克服→世界のコミュニケーション社会化は、もちろん一朝一夕には実現しない。しかしその前に、「貨幣の本質は差異である。だから貨幣経済下では格差(==貧困)はなくならない」ということが世界中の人たちの常識として普及する必要がある。そのためには、マスメディアの役割も大きい*。

*: そしてマスメディアは、「なぜ格差はなくならないのか」などの、愚かしいタイトルの番組や記事を、二度と制作提供しないこと!。

※上のパラグラフ冒頭、<貨幣の克服>という語からリンクされている、このブログの1年前の記事"Liberation from Money"とそれに寄せられているコメントを、「貨幣」と「コミュニケーション」を対置して論ずるこのような議論に初めて接しられた方には一読をおすすめします。

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[余談]
ところで、ドイツはベンツとかBMWとかフォルクスワーゲンとか、グローバルに貨幣との交換性の強い産品を作っている(そのほか、各種の産業機械も強い)。ギリシャやスペインに何があるか? 必死で思い出そうとしても、何もない(ささやかにワインと観光ぐらいだ)。だからギリシャなどは当面、チャリティ(生活保護)で生きるしかない。問題は、あの国の役人や政治家が長年、チャリティの不正受給をして私富を(スイスの秘密銀行口座に)蓄えたことだ。新規チャリティの追加以前に、ドイツやEU当局としては、それらの完全吐き出しをやらせることが、先決ではないか。

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[まったく別件]
この記事の末尾に、おもしろい記事へのリンクをつけました。

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コメント

全く見事です!
ぼーっとしていると、忘れがちになるので
この話題は、手を変え品を変え、して
繰り返して欲しいです。

読み直しの機会を得たのも良かった
ついつい、贈り物も、しちゃうんだよな
まだまだです、私も。

末尾のリンク記事も読みごたえありました。
交渉力、身に付けたいものです。

ところで、先日、久しぶりに電子部品調達に
パーツ店に出掛けました。ノートに必要な物
書き留めて、時間をかけて見つけて歩きまし
た。会計のおり、今までで一番、金額的には
少額だったのに、店員さんの機嫌は一番良か
ったのが印象的でした。はじめは、質問攻め
みたくなってしまって、憮然とされていたの
に。こいつマジなんだ、と思ってもらえたの
か?
お金とは別な側面でみている人もいる、
一寸した、エピソードととらえてもらえれば。

失礼しました

simomitu

投稿: 下光博之 | 2012年11月26日 (月) 22時17分

正直なところ
年がら年中、金に追われているような
仕事をしていて、岩谷さんの記事や
皆さんのコメントを読んでいると
救われる気がします。洗われるというか。

まずは生きていくうちにこびり付いて
しまった「きれいごと言っても所詮は金でしょ」
という嫌らしい根性を削ぎ落す事。

そこから開始いたします。

投稿: musataro | 2012年11月26日 (月) 23時57分

貨幣は沈黙交易のための道具。

コミュニケーションしたくないから貨幣がある。

貨幣があるから不幸が無くならない。

投稿: 南 | 2012年11月27日 (火) 09時36分

 「トレード」に依らないコミュニケーション。
 しかもムラには戻らない。貨幣は廃棄する。というか貨幣は嫌い。

 日々の関わりのなかで、それに繋がる小さな契機に気付いて、それを大事にするくらいしかない。できることは。
 でも、それはやる。

投稿: 市川智 | 2012年11月29日 (木) 00時24分

プログラミング、資本主義が、絡めばマーケティング。

投稿: s.hodo | 2012年12月 2日 (日) 09時20分

つづき。プロミングする側が削り穫る、 (物理的、生理的、社会的な)収容所の拷問。帝国主義(極東の僻地)で行われた、(今でもしぶとく生き延びて)いる基本的な行動原理。

投稿: s.hodo | 2012年12月 4日 (火) 22時23分

ヒトはなぜ差異を、欲しがるのだろう。

投稿: bad | 2012年12月 9日 (日) 00時48分

貨幣制度に対して否定されていますけど、現実的に考えると今の社会において突然貨幣を無くせば、バカみたいな生産がおこなわれなくなり、今の人口は維持できなくなり人類の人口は1000分の一ぐらいになるんじゃないのかな その現象過程は地獄だと思いますが、それでも無くなったほうがいいんですかね

投稿: トレーダー | 2012年12月 9日 (日) 00時51分

@トレーダー
お説は、貨幣が重要・大事という固着的錯視から必然的に生まれる、根拠のない妄想ですね。むしろすさまじく悲惨な“地獄”なのは、貨幣に多くの人(you are one of them)の心が支配されている“今”でしょう。そのことが見えないあなたの目と心は、相当粗悪だ、と言うしかありませんね。

@bad
それは、コミュニケーションを望まないから、むしろ支配・被支配関係を、望むからでしょうね。お金持ちは、貧乏人を“支配”できます。みんな、貨幣的に上に立ちたい。だから受験勉強や就活にはげむ。

投稿: iwatani | 2012年12月 9日 (日) 07時36分

 お金を超えるには、お金よりも、cool であることが生まれることでは?
 例えば、オールフリーな、、、コンピュータ、著作権 ...
 まあ、でも、コンピュータを覚えるにはお金は必要だし!
 一筋縄ではいきませんね。
 また、価値観の違いもあるし。

ただ、
   お金よりもクール
が、キーワード だと思います。

投稿: alarky | 2012年12月 9日 (日) 14時05分

病の根っこに人類の
勝利至上主義
がある。

敗北の何がいけない?。

投稿: 南 | 2012年12月10日 (月) 09時10分

@トレーダーさま

遅くなりました。うけうりですけれど

物理的人口上限は、120億人
現実的に生活できる人類上限は、その10パーセント
12億人
という説もあるようです
(「群れの科学 ー 大きさの調節機能 ー 」
/ 小沢正鵬 著 / 研成社)

それはそれとして、お金に対する態度を
反省してみるのは「いいね」と思いますヨ

今朝ラジオ聞いてたら、
「そうはいっても」と言うのは禁句にしてみたら
という話がありました
前に進めなくなるからね

なるほど、と感心しました

simomitu

投稿: 下光博之 | 2012年12月14日 (金) 06時26分

柄谷行人の本にあるが、みんな資本がなくてもいいという事を想像したこともないのだ。

投稿: bad | 2014年3月20日 (木) 13時56分

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